一人作業の安全対策は、監視機器を選ぶところから始めるのではなく、その作業を一人で行ってよいか、何を確認し、異常時に誰が対応するかを決めることから始まります。監視システムがあっても、禁止されている一人作業を許可できるわけではありません。
建設現場や工場・プラントで導入を検討するときは、「エリアに一人だけの状態」と「作業者の体調異常」を分けて考えることが重要です。本記事では、機器を比較する前に整理したい判断項目を紹介します。
まず一人作業の可否を確認する
本記事では、一人作業を、周囲に助けを求めたり状況を確認してもらったりしにくい状態で行う作業として扱います。同じ建物に複数人いても、別の階や死角に分かれていれば、必要な確認が届かない場合があります。人数だけでなく、互いの状況を把握できるかを見ます。
最初に、対象作業の危険性、適用される法令、現場の作業手順・禁止ルールを確認します。厚生労働省は、リスクアセスメントを、危険性や有害性の特定からリスクの見積り、優先度の設定、低減措置の決定までの一連の手順としています。監視の追加を検討する前に、作業方法や設備、必要な人員配置で危険を減らせないかを見直します。[1]
例えば、労働者を酸素欠乏危険作業に従事させるときは、酸素欠乏症等防止規則第13条が、常時の作業状況の監視と異常時の通報を担う者を置く等、異常を早期に把握するための措置を求めています。人数を数える機器だけで、この要件や他の必要措置を満たすと判断してはいけません。[2]
具体的な作業の適法性や必要な措置は、作業条件に応じて安全管理担当者が確認し、必要に応じて所轄労働基準監督署等に相談してください。本記事は個別現場の作業許可や法令適合を判定するものではありません。
何を知らせてほしいかを分ける
「一人作業を見守る」という言葉だけでは、必要な機能を絞れません。次のように、知りたい状態を先に書き出すと、製品の対象と限界を確認しやすくなります。
エリア内の人数と継続時間
一人作業禁止エリアで、一人だけの状態が続いていないかを確認する考え方です。人数を把握できても、本人の意識や体調、作業が安全に進んでいるかまで分かるとは限りません。
本人からの連絡や応援要請
定時連絡や手動の通報は、作業者自身が状況を伝える方法です。ただし、本人が操作・応答できない場合を想定し、連絡がないときの確認手順も決めておきます。
身体の動きや生体情報など
こうした情報を扱う機器を検討する場合は、測っている値、通知条件、装着・通信条件を個別に確認します。「見守り」という名称だけで、転倒や体調異常を検知できる、疾病を診断できると判断しないことが大切です。これらはAIMOS-Safetyの一人作業監視と同じ機能ではありません。
監視方法を増やしても、通知後に確認できる人がいなければ対応につながりません。英国の安全衛生当局HSEは、連絡の間隔や警報手段、作業終了の確認を含む仕組みと、緊急時の手順の定期的なテストを示しています。これは運用を考える参考情報であり、日本の法令上の要件を置き換えるものではありません。[3]
導入前に整理したい五つの項目
対象エリアと禁止ルール
どの場所・作業を対象とし、何人で、どの役割を担う必要があるかを整理します。「現場全体に二人いる」と「対象作業に必要な人が配置されている」は区別します。監視のために禁止ルールを緩めないことも共有します。
見える範囲と確認できない状態
画像を使う場合は、資材や設備の陰、作業姿勢、照明、画角の端などを確認します。人が映らない状態を「誰もいない」と扱うのか、「確認できない」と扱うのかも確認事項です。これは選定時の確認項目であり、特定製品の実測性能を示すものではありません。
通知までの条件と時間
どの状態が、どの程度続くと、誰に通知されるのかを確認します。通知までの時間は、一人で作業してよい猶予時間ではありません。禁止されている一人作業を、通知が鳴るまで続ける運用にはしません。
受信後の担当者と連絡経路
通知を受ける担当者、応答できないときの代替担当、現場確認の方法を決めます。危険場所へ無計画に駆け込むのではなく、現場で定めた緊急時対応・救助手順に従える体制を整えます。
停止時の対応と記録の扱い
電源や通信が途切れた場合の気づき方と、その間の作業判断・代替確認を決めます。撮影する場合は、目的、閲覧できる人、保存期間、作業者への説明も整理します。継続運用では、機器の稼働だけでなく、担当者への引継ぎや手順の実行状況も確認します。
現場条件を一枚にまとめて相談する
相談前には、対象エリア、作業内容、一人作業禁止の理由、必要な人員・役割、通知先、電源・通信の状況を一枚にまとめると、導入可否や追加確認事項を具体化しやすくなります。図面や写真を使う場合は、社内の情報管理ルールに沿って共有範囲を確認してください。
例えば、二人配置を必要とする作業で、片方が資材を取りに離れる場面を想定します。検討すべきなのは、離れている間の作業中止・再開の手順と、そのルールから外れた状態をどう把握するかです。監視機器の導入を理由に、残った一人で作業を続けられると判断するのは適切ではありません。この例は検討用の仮定であり、実際の顧客事例ではありません。
AIMOS-Safetyの一人作業監視で確認すること
AIMOS-Safetyの公開案内では、固定したスマートフォンで一人作業禁止エリアの人数と継続時間を確認し、一人の状態が一定時間続いた場合に通知する仕組みを紹介しています。監視対象は人数とその状態の継続時間であり、体調の診断を行う機能ではありません。[4]
Alert Linkを使った事務所・管理室への通知は、構内Wi-Fiの通信範囲内で利用する案内です。導入前には、対象エリアの映り方、判定時間、通知の到達、受信後の担当者の対応を確認してください。具体的な時間設定や遮蔽時・通信停止時の挙動は、現場条件と合わせて個別に確認する必要があります。[4]
一人作業禁止ルールを補助する監視を検討している方は、対象場所・作業内容・設置候補・通知先を整理してご相談ください。必要な構成と、現場で確認すべき条件を検討します。
よくある質問
二人映っていれば安全と判断できるか
できません。必要な人員・役割や作業方法が守られているかは別の確認です。人数の確認は、安全確保に必要な対策の一部を補助するものとして位置付けます。
通知がなければ一人作業は起きていないか
そうとは限りません。対象の映り方、判定条件、機器や通信の状態も確認します。無警報を安全の証明と扱わず、現場で決めた確認手順を維持してください。
選定の基準は、機能の多さよりも、現場の禁止ルールと監視対象が合っているか、確認できない状態を把握できるか、通知を実際の対応につなげられるかです。
本文の参考資料
以下は本文とともに公開する参考資料です。確認日:2026年10月21日(日本時間)。
[1] 厚生労働省 職場のあんぜんサイト リスクアセスメント
[2] 厚生労働省 酸素欠乏症等防止規則 第13条ほか
[3] 英国HSE Training supervision and monitoring
[4] AIMOS-Safety 一人作業監視



